私は、脇見恐怖症への理解を深める上で、仏教が大きな参考になると思っています。
仏教は、「内面的な苦悩につきまとわれたとき、人はどうすればいいのか?」「どうすれば苦悩から解放され、心の平安を手に入れることができるのか?」といった、人間の心の普遍的な問題をテーマにしてきました。
こういった問題はまさに、脇見恐怖症に陥った人が直面することではないでしょうか。
脇見恐怖症を含む、神経症全般の治療として定番の「森田療法」も、その考え方や治療方法には、仏教の影響が見られます。
私も仏教については以前から興味があり、いくつか本も読んできました。特によく読んだのは、仏教学の第一人者とされる中村元や、日本の禅文化を海外に広めた鈴木大拙などの著作です。浄土真宗を開祖した親鸞の「歎異抄」を始めとして、仏教書の原典もいくつか読みました。
そうやって仏教関連の書籍を読んでいると、思わずはっとする気付きを得られることも多いですが、仏教の宗派や解釈の違いが非常に複雑なため、ディテールに入り込んでしまうときりがなくなってしまいます。
そんな中、近年ベストセラーになった、ユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史」が、仏教の開祖とされる釈迦(ゴータマ・シッダールタ)の思想の本質をわかりやすくまとめていました。著者はイスラエルの歴史学者ですが、仏教を非常に客観的な視点で理解しようと努めたためか、意外にも本質をとてもわかりやすく、的確に説明しているように思いました。ちょっと長くなりますが以下に引用します。
“仏教の開祖・釈迦(ゴータマ・シッダールタ)の教えから、脇見恐怖症を考える” の続きを読む